2011年9月3日土曜日
背ワニのボストン
凄いバッグが出来上がってきました。
ご存じの方も多いとは思いますが、ワニ革は大きく2種類に分けられます。
ワニを背の部分から割き、腹部の鱗(または斑)をいかした肚(ハラ)ワニと呼ばれるタイプと、腹を割き、背部の凹凸をいかした背ワニと呼ばれるタイプの2つです。
現在、市場で流通する多くが肚ワニで、背ワニを使った商品を見るのは稀になってきました。
しかし、ワニ革がお好きで、こだわりをお持ちの方々の中には、背ワニをうまく使ったバッグや財布を好んでお持ちになられる方がいらっしゃいます。
今回のお客様も、そんなこだわりをお持ちでいらっしゃるお一人です。
まずこのバッグの特徴の一つとして、背ワニの隆起が付いた幅のあるベルトが真中にあります。
このバッグのファスナーを開けるには、まずこのインパクトのあるベルトを外さなければなりません。
ワニ革は腹部に比べ、背部の方が固く、特に突起部に近い背部を裁断し縫い付けるのはなかなか苦労する職人泣かせの作業です。
正面から。
側面。
後面。
上方から。
ベルトを外し、持ち手を広げた状態。
それを横から見た状態。
バッグをひっくり返して見た底部。
側面一面から底部中央まで一枚の背ワニの革でつながっているのがお分かり頂けると思います。
背ワニには、ワニの頸部にあたる部分に頸鱗板(けいりんばん)と呼ばれる特徴ある丸い隆起と、少し離れて背部から始まる背鱗板(はいりんばん)と呼ばれる連なった隆起があります。
頸鱗板はクラウンと呼ばれ、その美しい天然の王冠が背ワニの価値を高めます。
このバッグは贅沢にも左右の両側面にそれぞれ一つづつのクラウンと、そこからつながった背鱗板を持っています。
クラウンが下部にあり、中段から上部にかけて背鱗板が始まっていますので、ちょうどワニが逆立ちした状態です。
内側は、赤い牛革を使いました。
底部に4つのホックが付いており、底部を中心から折って、重ねて留めることができます。
こうすることで、すこしコンパクトになり、シルエットの違うバッグに変身します。
正面。
側面。
何と言っても、このチョコレートと呼ばれる焦げ茶色が、この背ワニを素材としたボストンバッグにとても良く合っていました。
もしワニ革バッグの作品コンテストがあったら、ぜひ出品させていただきたいと思う程の出来ばえでした。
もちろんこのバッグはお客様にお納めする商品ですが、私どもにとってはまた新たな成果となる作品の一つになりました。
尚、バッグの正面には真鍮のプレートにお客様のお名前を彫り込みました。
また、持ち手の付け根の金具はこのバッグのために4つだけ作りました。
通常、ニッケルやゴールドを選択するところ、「銀古美(ぎんふるび)」という特別な色でメッキ加工を施しました。
このバッグの作製に使われたデザイン画と仮縫いモデルです。
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